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Tokyo Metropolitan Assembly

平成十四年東京都議会会議録第四号

○副議長(橋本辰二郎君) 五十番新井美沙子さん。
   〔五十番新井美沙子君登壇〕

○五十番(新井美沙子君) 初めに、家族的責任のあり方について伺います。
 戦後、日本では経済効率最優先で、男性が外で働き、女性が家庭でそれを支えるという、性別役割分業の家族モデルを誘導する社会の仕組みがつくられてきました。配偶者控除などの税制度、年金など社会保障制度、企業の配偶者手当など、女性にとっては働かないでいる方が得になる社会の仕組みが、大量の専業主婦を生み出してきたのです。
 しかし、一九八五年に女子差別撤廃条約、一九九五年にILO家族的責任条約を批准してからは、男女平等社会の実現に向け、国内法も次第に整備されてきています。
 昨年六月には、内閣府の国民生活局が、家族とライフスタイルに関する研究会報告を出しましたが、その中で、経済成長が望めない今、家族で一人しか働かないというスタイルはリスクが大きく、男女がともに働き、家族的責任を果たしていくのが経済的にも望ましいとの結論を出しています。
 また、厚生労働省の女性と年金検討会の報告でも、年金給付モデルは、専業主婦世帯から共働き世帯への大転換が提言され、社会保障制度審議会で具体的な審議に入っています。
 このように、夫が働き、妻が家事、育児に専念する、こういう生き方を誘導してきた制度を、中立的なものにしていこうという社会の大きな動きがある中、知事は、昨年の第四回定例会本会議で、お嫁さんとおしゅうとめさんとは大概仲の悪いものですけれど、いい争いの中でおばあちゃんから教わることはたくさんある、育児に関しても。いってみると、日本の家庭にかつてあり得た伝統というものが疎外されてしまった中で、せっかく生まれてきた子どもが、いろいろな危機にさらされていることは否定できないと答弁されました。
 その視野には夫やしゅうとの姿はなく、子どもを育てるのは女性の仕事という性別役割分業がよい伝統であったかのような発言です。男女平等参画社会を目指す首都東京のトップたる石原都知事がこのような発言をなさったことは、非常に残念です。
 さまざまな調査によると、子育てに悩む孤独な母親にとって、夫の協力が得られないことが大きな要因なのです。知事は、家族的責任のあり方についてどのようにお考えなのか、忌憚のないご意見をお聞かせください。
 家族的責任は、まだまだ女性に偏っているという現状がありますが、男女の家族的責任と職業上の責任との両立支援について、男女平等参画のための東京行動計画でどのように実行していくのか伺います。
 また、東京都職員の育児休業取得の実績は、平成十二年度で、女性千四百四人に対し男性二十一人と、女性職員の一・五%で、ここから学校職員を除くと、たった〇・四%にすぎません。広く都民に啓発する立場の東京都として、男性職員の育児休業取得の促進についてお答えください。
 次に、包括的まちづくり事業について伺います。
 都の再開発事業では、地域に住まう方々の五〇%から六〇%が転出してしまうと聞いています。これは、都市計画が地域に暮らす人々のためでなく、土地の流動化による経済の活性化のために行われている結果ではないでしょうか。都市の再生を考えるとき、日本の首都としての東京と、人々が暮らす一地方としての東京という二つの側面に注目しなければなりません。ややもすると、首都としての東京再生ばかりがスポットライトを浴びがちですけれども、千客万来のまちが、そこに住む人々の暮らしを損なうまちになってしまっては本末転倒です。
 都では、民間活力の活用としてPFIなどの再開発の手法に注目をしていますが、民間の資金投資という側面が強いように感じられます。コミュニティという視点でのまちおこしについてどのようにお考えでしょうか。
 かつて英国では、サッチャー元首相が規制緩和と行政改革で大なたを振るい、英国病とまでいわれた経済は回復しましたが、その結果、富める地域と荒廃する地域との格差は広がり、貧富の差も激しくなってしまいました。
 九〇年代に入ると、この格差を是正し、コミュニティを活性化させるための施策、SRB、シングル・リジェネレーション・バジェットが打ち出されました。ブレア首相にかわってからは、いわゆる第三の道として、より強力に取り組まれ、地域に根差したNPOとのパートナーシップによる事業に予算をつけていったのです。
 包括的まちづくり予算と訳せるかと思いますけれども、その予算措置の基準は、地域の人たちの参加がどれだけ得られるか、行政やNPO、企業などのパートナーシップができているか、そしてその事業が雇用も含めて地域にどれだけの活気をもたらすかというものです。すべての縦割りをなくし、コミュニティの包括的なニーズに対応できるようになっています。もう一つのSRBの特徴は、パートナーシップで事業を行うことにより、国、地方自治体、企業、財団などの資金を集めることです。
 日本でも、失業率六%が目前に迫り、将来に対する不安が大きくなっている今こそ、地域経済の活性化が求められています。コミュニティは横割りで、そこでは、社会福祉、都市計画、労働、教育、文化などの個々の事業が複雑に絡み合って展開されています。包括的まちづくり事業を創設することで、地域の元気を引き出し、地域住民みずからがセーフティーネットワークをつくり出すことができるのだと思います。
 都では、十二年度に福祉の分野で包括補助金制度が全国に先駆けてスタートしました。非常に好評のようですが、分野が限定され、メニューが提示されるなど、包括的とはいいがたいところがあります。この補助金をさらに先駆的な、市民の力を引き出せるようなものに変えていくために、SRBを参考にした包括的まちづくり事業の創設が必要です。
 今回の予算編成の新たな仕組みとして導入された重要施策の選定に当たっては、各局が立案した事業の中から、局間の垣根を越え、連携して実施する事業や、民間の活力を利用した事業等を選定したとあります。今後はこの考えを発展させ、SRBを参考にした包括的まちづくり事業を立案すべきと思いますが、見解を伺います。
 次に、多摩ニュータウンとその周辺の諸問題についてお尋ねをいたします。
 多摩ニュータウンは、戦後日本でつくられた最大規模のニュータウンです。このまちをつくるに当たっての戦略は、都心に対し、多摩地域に短期間に大きな人口集積地をつくることでした。基盤整備の豊かさが注目されますが、今ではまちづくりのキーコンセプトとなっているバリアフリー、コミュニティ、環境との共生、持続可能な開発、余暇といった概念はその当時はなく、同じ間取りの住宅がすさまじい勢いで建設されていったのです。
 入居開始から三十年が経過した今、さまざまな問題が多摩ニュータウンには発生しています。五階建てでエレベーターのないバリアフルな住宅の群れ、同世代がほとんどという不思議な人々の固まり、いわゆるかいわいのない潔癖過ぎる町並み、まさに実験都市です。さらに、今後まれに見る勢いで少子高齢化が進んでいきます。
 今年度で多摩ニュータウン建設を進めてきた多摩都市整備本部が廃止になりますが、まちづくりを担ってきた東京都には、宅地造成などの基盤整備にとどまらない多摩ニュータウンのいわば製造者責任があるのだと思います。まだ利用されていない土地を売却すれば役割が終わるのではなく、今後ともニュータウンの抱える諸問題に対処するために、地元市や公団との調整も含め、多摩ニュータウンのまちづくりに積極的に役割を発揮していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、多摩ニュータウンの周辺は市街化調整区域が多く、森林や里山などの貴重な自然が残ってますが、相続による開発や産業廃棄物や残土の廃棄による汚染で、存続の危機に瀕しているところがあります。緑の東京計画の中でも、多摩丘陵ゾーンは、市街化の圧力により喪失するおそれのあるところと指摘され、丘陵地の自然を切り崩してつくったニュータウン周辺に残された緑は、積極的に保存する必要があると考えますが、どのように取り組まれるお考えでしょうか。
 一昨年、都は自然保護条例を改正し、里山保全地域を制度化しました。各地で保全にかかわっている市民の方々の期待は高まりましたが、まだ具体的な動きがありません。せめて指定だけでもという声が高まっておりますけれども、どのように進めていかれるのでしょうか。
 以上、三点所見を伺いまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 新井美沙子議員の一般質問にお答えいたします。
 家族的責任のあり方についてでありますが、前回の定例議会で私が申し上げましたことは、かつて日本の家庭においては、いわゆるおばあちゃん、そしてお嫁さん、そういった世代を超えたというか、三代にわたるいろんな継承がありまして、育児の伝統もまたそこで、この程度の熱ならお医者さんにかかる必要はないとか、そういう親から諭されて若い母親がやっと安心するといった、そういう引き継ぎがありました。私の家庭もそうでありました。
 現代は、それが核家庭ということで失われてしまって、家伝統のおみおつけの味であるとか、漬物の味であるとかも、私はやっぱり、親子三代が住むということが、そういうものの確保につながると思うんですけれども、現代はなかなかそうはいかない。結果、家庭やその地域における養育力は低下して、子供の非常に不幸な問題が、いろんな形で顕在化しているということを申し上げたものでありまして、それを女性へのべっ視であるとか、偏見ととるのは、あまり賢明な認識ではないと思う。人のいったことを得手勝手にくくるというやり方は、あんまり、知的、インテレクチュアルとはいえませんな。悪い意味での政治的でありまして、よくどこかの政党がやりますが、私はあんまりそれを好まない。(発言する者あり)黙ってお聞きなさいよ。
 私には、「いま魂の教育」とか、「『父』なくして国立たず」、かなり名著がありますので、この問題について、要するに、あなたに正確な社会的な認識を持っていただくためにも、よろしかったら献呈いたしますから、よく熟読していただけたらありがたいと思います。
 私は、子どもを育てる子育ての責任は、当然父親にもありますし、母親にもあると思います。ただ、父と母親というのはおのずと違いまして、十カ月おなかに子どもを宿して、子どもを産んで育てるお母さんと、その愛情と、父親としての愛情というのは質が違うと思うし、私はその分担について詳しく本で書きました。ここでくどくど申しませんが、その父親というものに対する扱い方が、三代に住んでいる家庭ならあり得ないようなことになっている。
 例えば、今日の核家庭の実態を調べた、あれは岡山の新聞でしたか、地方の大都市での典型的な団地の中の実態をまとめた「妻の王国」という非常におもしろい読み物がありました。その中で、驚くような事例がたくさんありましたが、例えば、お母さんが男の子をしかるとき、おまえ、そんなことをしたらお父さんみたいな人になるよとしかる。それから、トイレを汚すというので、お父さんにも、おしっこするときも、女と同じしゃがんでやってくれ、そういうことを母親が子どもに強制し、子どももそれにならわされて、男の子が、学校行って、うっかりそういう形で用を足すということだったら、とんでもない誤解を受けたり、ばかにされたり、いじめの対象になるわけでありまして、つまり、そういう母親というものが今日ばっこしているということは否めない、これは。これは男の責任でもあり、女の責任でもある。私たちの責任であるから、それを大いに自戒しようということで申し上げたわけであります。
 父親が子どものしつけや教育にほとんどかかわっていない昨今の状況において、これは私も危惧しておりまして、東京が主唱している心の東京革命においても、父親も乳幼児時期から積極的に子どもに触れることを呼びかけておりますし、父親もまた積極的に育児にかかわるべきであるという、かねてからの私の主張を正確にご理解いただければ、一部の表現を曲解して、今回のご質問のような誤解も生じないものと考えます。
 他の質問については局長から答弁します。
   〔生活文化局長高橋信行君登壇〕

○生活文化局長(高橋信行君) 家族的責任と職業上の責任の両立についてでありますが、男女を問わずだれもが、家庭と仕事や社会活動等の両立ができることは、男女平等参画社会を実現する上で大変重要であります。このため、本年一月に策定した男女平等参画のための行動計画では、特に子育てに対する支援を重点課題の一つとしております。
 子育てや両立の支援について、都の施策においては、父親も母親も子育てにかかわることを進めている心の東京革命の推進や、私立幼稚園預かり保育等を含め、保育サービスの充実を図っていくとしております。都民や事業者においては、子育て支援ネットワークづくりや男女が育児休業を取得しやすい環境の整備等に取り組んでまいります。
 子育ては、基本的には親の責任でございますが、こうした施策や取り組みによって地域社会で子育てを見守り、バックアップしていく体制をつくってまいります。
   〔総務局長大関東支夫君登壇〕

○総務局長(大関東支夫君) 都における男性職員の育児休業取得の促進についてのお尋ねがございました。男女がともに家庭責任を担いつつ、公務と育児を両立できるようにすることは、大変重要であると考えております。
 今回、育児休業の対象となる子の年齢を引き上げる法改正に伴い、東京都におきましても、夫婦が協力して、交互に育児休業を取得できるようにするなど、制度の充実を図りました。
 今後とも、制度の一層の周知や啓発を図り、男性職員も含め、育児休業を取得しやすい職場環境の整備に努めてまいります。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 都市再生における民間活力の活用についてのご質問にお答えします。
 都市再生は、民間開発を誘導することにより、都市機能の高度化などを進め、それをてことして、我が国の経済の再生や国際競争力の回復を図ることを目的としております。
 開発に当たりましては、地権者など関係者間の合意形成の促進を図り、民間の意欲や活力が発揮できるようにすることが必要であるというふうに考えております。
   〔知事本部長田原和道君登壇〕

○知事本部長(田原和道君) 包括的まちづくりについてでございます。
 東京構想二〇〇〇でお示しをしてございますように、これからの東京の都市づくりは、首都圏レベルでは、各都市が相互に連携をした環状メガロポリスを目指すとともに、身近な生活圏レベルでは、福祉や医療などの生活支援機能が充実をしたコンパクトなまちを目指すこととしております。
 この生活圏でのまちづくりでは、民間企業や都民、NPOなどの参加を得て進めることが特に重要でございます。
 都といたしましては、計画段階におけるパブリックインボルブメントを進めるなど、住民の発案を生かしたまちづくりの導入に取り組んでいるところでございます。
 お話のSRB、包括的まちづくり予算でございますけれども、イギリスと日本の都市事情の違いもございますけれども、行政と民間との協働による手法の一つとして今後研究をしてまいります。
   〔多摩都市整備本部長石河信一君登壇〕

○多摩都市整備本部長(石河信一君) 多摩ニュータウンにおける今後の都の役割についてでございますが、多摩ニュータウンは、道路、公園などの都市基盤がおおむね整備されまして、また、公共下水道など公共施設の地元市への引き継ぎが進められております。
 今後は、残された宅地の販売を進め、商業・業務、教育、文化などの施設を誘致し、よりバランスのとれたまちづくりを進めていくことになりますが、これによって、既に居住しておられる方々も、より快適な生活を享受できることになると期待されます。
 多摩ニュータウンはこのように収束期を迎えていることから、多摩都市整備本部は建設局に統合されることになりますが、新たな組織においても、これまでと同様、積極的にまちづくりに取り組んでいくことになります。
   〔環境局長赤星經昭君登壇〕

○環境局長(赤星經昭君) 緑行政に関します二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、多摩ニュータウンの周辺の緑の保全についてでございますが、近年開発が進みまして、樹林地のみならず、谷戸や里山も減少してきております。
 このため、丘陵地の残されました自然を保全する観点から、関係局と十分連携しながら、計画的な位置づけのない新規の開発を原則として抑制いたしますとともに、自然保護条例に基づく自然地の保全と緑地の確保に努めてまいります。
 次に、里山保全地域の指定についてでございますが、里山保全地域制度は、雑木林、農地、湧水等が一体となった丘陵斜面地と、その周辺の平坦地から成る地域を対象に、多様な動植物が人間と共存しながら、生息、生育する良好な里山に回復し、保全するものでございます。
 都は現在、制度の対象となる里山について、多摩丘陵里山保全連絡会を設けまして、都民やNPO、地元自治体などと、担い手の確保など里山にふさわしい保全のあり方について検討を進めております。
   〔五十番新井美沙子君登壇〕

○五十番(新井美沙子君) 私は、知事の発言を曲解したのではなく、危惧をしているわけでございます。私もぜひ知事にお勧めしたい「子育てに出会うとき」という本がございますので、今度お持ちいたしますので、ぜひお読みいただきたいと思います。
 都市計画局長に再質問させていただきます。
 私が伺ったのは、再開発の中でのコミュニティの視点でのまちおこしについてどう考えていらっしゃるかということですので、再度それにお答えいただきたいと思います。
   〔都市計画局長木内征司君登壇〕

○都市計画局長(木内征司君) 都市再生の意義について申し上げたものでございまして、その中では、答弁の中で申し上げましたように、開発に当たっては、地権者など関係者間の合意形成の促進を図りということですから、コミュニティの形成といいますか、コミュニティの視点は、当然にその答弁の中で既にご答弁申し上げているとおりでございます。

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