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Tokyo Metropolitan Assembly

厚生委員会 管外視察報告

平成27年5月21日(木曜日)から5月22日(金曜日)
委員長 遠藤守(公明党)

 団塊世代が75歳以上になる2025年度には、都内の高齢者の4人に1人は要介護者になり、介護職員も不足が見込まれます。要介護者の増加に伴い、65歳以上の介護保険料も上昇が見込まれます。こうした課題に対応するため、都は平成27年度からの3年間を計画期間とし、あらゆる対策を総合的に進めるとしました。

 このような状況下で、厚生委員会は、所管事業のうち、認知症対策、障害者施策、高齢者対策、最新医療体制などについて調査するため、石川県及び福井県にて視察を実施いたしましたので、その概要をご報告いたします。

敦賀温泉病院

 1日目の5月21日は、福井県敦賀市の敦賀温泉病院を訪問しました。

 平成2年に開設された同病院は、認知症高齢者への積極的な支援や町ぐるみの連携で注目を集める敦賀市での認知症高齢者対策の中心的役割を果たしています。

 同病院は、平成6年に県の「認知症疾患医療センター」として指定されており、理事長の玉井晃先生を中心に、徹底したチーム医療と地道な啓発活動で「患者さんもご家族も満足する病院」を実現しています。

 同病院は、ベッド数120床、内科・心療内科・精神科・歯科・リハビリテーション科からデイケアまでを有し、検査技師・精神保健福祉士・作業療法士・臨床心理士・介護福祉士・音楽療法士といった多くのスペシャリストがそろった病院として知られ、地元の人々の健康を支えています。

 同病院の特色の一つに挙げられているのが、徹底したチーム医療であり、「できる限りすぐに診てあげたい」との玉井理事長の思いから、徹底した分業方式で「待たせない診療」を実践しています。

 通常の認知症の診療は予約制の医療機関が多く、中には3か月待ちのところもあります。一方で、家族からの聞き取りなどに時間がかかり診察を受けるまでに症状が進んでしまい、患者や家族の悩みも深くなります。

 うつ病、統合失調症、認知症に共通するのは「早期受診が患者や家族のメリットになること」とのことです。そこで、当病院では、玉井理事長が開発した認知症の状態を把握するツール「行動観察方式AOS」により、すばやい診療を行っています。

 また、玉井理事長は、行政機関・医療機関だけでなく、患者の家族などに向けた講演会も積極的に引き受け啓発にも努めています。

 25年前、大学病院に勤務していた玉井理事長は、北陸の山深い地へ訪問診療に行かれた際に、重度認知症患者と介護に疲れ果てた数多くの家族に出会いました。

 「家で看られない人は、病院でも無理」と入院を断られたという家族の力ない言葉が胸に突き刺さったそうです。そして、大学病院にとどまっていては、認知症の実態は見えづらい、自ら地域に根差した診療をせねばという思いが開院へとつながったそうです。

 平成30年までに全国の区市町村が配置することを求められている「認知症初期集中支援チーム」は、同病院の「認知症アウトリーチ専門チームDOST」通称「お出かけ専門隊」がモデルの一つであると言われています。

 「お出かけ専門隊」は、地域包括支援センターからの連絡を受け、看護師や精神保健福祉士などが患者の自宅に出向き、前述のツール「行動観察方式AOS」などを用いて総合的に評価し、必要な支援を行うとしています。

 都においても、平成25年から「認知症早期発見、早期診断推進事業」を開始して、区市町村に配置する認知症コーディネーターと認知症疾患医療センターに配置する認知症アウトリーチチームが協働して、認知症の疑いのある人を把握・訪問し、状態に応じて適切な医療・介護サービスにつなげる取組を進めています。

 事業設計に当たっては、同病院の「認知症アウトリーチ専門チーム」の活動を参考にしているとのことです。

 説明聴取後、家族のいない単身者や、かかりつけ医との関係はどうすべきか、また、院長のこの先の展望などについて、熱心な質疑応答が行われました。

 その後、病院内のデイケア施設を視察しました。

 そこでの患者さんたちの明るい表情に驚きを感じると同時に、病院の至るところに、玉井理事長の熱意、人柄や情熱が感じられ視察の醍醐味を感じました。

「シェア金沢」

 2日目の5月22日は、都における高齢者・障害者福祉政策などに関する参考とするため、初めに「シェア金沢」を訪問しました。

 まず、奥村施設長から、ビデオを交えながら説明を聴取しました。

 「シェア金沢」は、社会福祉法人佛子園(ぶっしえん)が、旧国立金沢若松病院跡地の約33,000平方メートルの敷地に整備したもので、障害者、高齢者、大学生などが分け隔てなく誰もが共に手を携え、主体性を持って地域社会づくりに参加する街づくりを目指し、平成26年4月から全面オープンした施設です。

 障害児入所施設、高齢者デイサービス、サービス付き高齢者住宅のほか、世代を超えた交流を促進するため、家賃が格安な学生向け住宅などを用意しています。

 敷地内には、佛子園が運営する障害者の就労支援事業所があり、就労を希望する障害者に対し一定の期間、生産活動などの機会の提供を通じて就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練などを行っています。

 一方でこの街には、住民の生活の支えとなり、潤いをもたらしている施設も入っています。

 クリーニング店、カフェ、セレクトショップ、料理教室,ボディケア、ウクレレ教室など個性的な店舗があり、これらは単に利用するだけでなく障害者の就労移行支援では、施設内のクリーニング店や料理教室における補助作業や、高齢者デイサービスにおいて見守りサービスを行っており、また、就労継続支援では、障害者がレストランにおける設備のメンテナンスや清掃を行っています。大学生はボランティア活動を行い障害者との積極的な関わりを生み出すことによって家賃を割り引く仕組みになっています。

 また、アルパカ牧場やドッグラン、フットサルなどのスポーツ教室もこの街の和らいだ雰囲気と潤いを与えています。

 「シェア金沢」は、小松市にある一度廃寺になった西園寺を、温泉や居酒屋を併設した地域コミュニケーションや、高齢者と障害者のための福祉拠点として甦らせた経験がもとになったそうです。いろいろな人が集まることで起きるいわゆる化学反応を金沢でもっと多くの人を巻き込んでできないかと考えたそうです。従来の「縦型福祉」から脱して、障害者だけでなく健常者も、また若者も高齢者も分け隔てなく一緒に暮らせる街を創るという壮大な試みで始まりました。人が心地よいと感じる環境を分析し、街を創ったとのことです。

 説明聴取後、視察現場を見ながら、導入事業の経費や経済効果などについて質疑応答が交わされました。

福井大学医学部附属病院・福井メディカルシミュレーションセンター

 次に福井大学医学部附属病院・福井メディカルシミュレーションセンターを視察しました。

 同病院は、病床数600床を有する総合病院であり、福井県における中核病院です。

 手術支援ロボット「ダヴィンチ」など先端医療機器を導入するハイブリッド手術室や各種シミュレーション施設を設置している全国でも有数の医療教育施設です。

 初めに、「PNS」(Partnership Nursing System)について、説明を聴取しました。

 「PNS」とは「2人の看護師がパートナーとして互いの特性を活かし、毎日の看護ケアから、病棟内の仕事に至るまで1年を通じて活動し、成果と責任を共有する看護体制を指す」とのことです。

 同病院では、「PNS」の導入により、病棟勤務でも短時間勤務が可能になり、看護師がやりがいを感じ、離職防止につながっているとのことです。

 次に、メディカルシミュレーションセンターを視察しました。

 県内すべての医療従事者を対象に、腹腔鏡手術、内視鏡手術、血管内治療、集中治療など年々高度化する医療に対応するため、シミュレーターを設置しています。

 また、同病院では、臨床教育研修センターに大小合わせて14室ものシミュレーションブースを有しています。

 「緊急被ばく医療」専門のシミュレーションルームも設置し、医療従事者が均一な診療技術を習得でき、慣れない実技によるリスクを軽減させています。

 多職種のスタッフが日ごろから連携してトレーニングを積むことで、緊急時にも迅速かつ円滑な医療提供体制になっているのです。シミュレーターを介して、先進医療の魅力を医学生、若手医師などに伝えることができ、県内で働く医療従事者の確保につながるとのことです。

 その後、1次救急から3次救急まで受け入れるER体制や災害時にはトリアージスペースとして活用できるアメニティエリアを視察しました。

 以上、2日間という限られた日程ではありましたが、現地を直接視察し、活発な意見交換ができましたことは、大変有意義なものでありました。

 こうして得た成果を、今後の委員会活動を通じて、都の施策に役立ててまいります。

 最後になりますが、この度の視察に際し、敦賀温泉病院、社会福祉法人佛子園・「シェア金沢」及び福井大学医学部附属病院の皆様方には、お忙しい中、懇切丁寧に対応していただきましたことに、心から御礼申し上げ、厚生委員会管外視察の報告とさせていただきます。

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